はじめに
オーガニック食品は、農薬や化学肥料を使わずに栽培された安全で環境に優しい食材のことです。近年、健康志向の高まりとともに、世界的にオーガニック市場が急成長しています。しかし、日本ではまだオーガニックの普及が遅れており、消費者の意識も海外と比べて低い状況にあります。本記事では、日本とアメリカやヨーロッパなど海外におけるオーガニックの違いや課題、そして今後の展望について、詳しく見ていきます。
オーガニック市場の現状
オーガニック市場の規模には日本と海外で大きな開きがあります。アメリカやヨーロッパでは既に市場が成熟し、消費者にもオーガニック製品が浸透しています。一方の日本は、まだオーガニック後進国と呼ばれる状況です。
海外のオーガニック市場
アメリカでは、1990年代にオーガニック食品生産法が制定され、国を挙げてオーガニック農業を推進してきました。その結果、現在ではオーガニック野菜の売上が全体の約15%を占めるまでに成長しています。ヨーロッパでも、有機農業の発展に伴い、スーパーマーケットにオーガニック専門コーナーが設置されるなど、消費者にとってオーガニック製品が身近なものになっています。
また、オーガニックコスメにも注目が集まっており、天然由来の安全な成分を使用した製品が人気を博しています。このように海外では、食品だけでなく、様々な分野でオーガニック製品が浸透しつつあります。
日本のオーガニック事情
一方、日本ではオーガニック市場の成長が遅れています。日本の有機農地の割合は農地面積全体のわずか0.5%程度で、一人当たりの年間オーガニック食品購入額も欧米諸国と比べて大幅に少ない状況です。その背景には、以下のような要因が指摘されています。
- オーガニック認証取得の高コスト
- 政府による支援策の不足
- 消費者のオーガニックに対する理解不足
しかし近年、消費者の健康志向の高まりからオーガニック製品への関心が高まっており、日本のオーガニック市場にも変化の兆しが見え始めています。
オーガニックに対する意識の違い
日本と海外では、オーガニックに対する意識や考え方に違いがあります。この違いが、オーガニックの普及状況にも影響を与えていると考えられます。
海外の考え方
海外、特にヨーロッパやアメリカでは、オーガニックが持続可能な社会の実現や環境保護につながるという意識が強くあります。BSEやダイオキシン問題などを契機に、従来の工業的な農業に対する問題意識が高まり、環境に配慮したオーガニック農業が推進されてきた経緯があります。
また、オーガニック専門店が身近にあり、生産者と消費者の交流の場が多いことも特徴です。生産者の顔が見える関係性から、オーガニックへの信頼感が生まれていると言えるでしょう。
日本の考え方
一方、日本ではオーガニックに対する関心が海外ほど高くありません。日本の食文化は本来健康的で、必ずしもオーガニックを意識する必要性が低かったことが一因と考えられます。また、安全性よりも価格を重視する傾向があり、相対的にオーガニック製品が選ばれにくい状況にあります。
しかし近年、SDGsの推進などから環境に配慮する機運が高まっており、オーガニックの持つ意義が見直されつつあります。これに伴い、スーパーマーケットでもオーガニックコーナーの設置が増えるなど、オーガニックが身近なものになりつつあります。
オーガニックの基準と認証
オーガニック製品が適切に認証され、消費者に正しく情報が伝わることが重要です。日本と海外で、そのオーガニック認証の基準や考え方に違いがあります。
日本の有機JAS認証
日本では、農林水産省により「有機JAS制度」が定められています。この基準を満たした製品にのみ、有機JASマークの表示が認められています。製品ごとに、原料のオーガニック比率に応じて4つのカテゴリーが設けられており、表示方法も規定されています。
一方で、日本の有機JAS基準では、生物多様性の保全など環境面での配慮が十分でないとの指摘もあります。また、生産者の認証取得コストが高額なことも課題視されています。
海外の認証制度
アメリカには「USDAオーガニック認証」という制度があり、2002年から運用が始まりました。USDAの基準は、日本の有機JASよりも包括的で、資源の循環利用や生態系のバランス維持なども求められています。酪農品では、搾乳期間や放牧条件など細かい点まで規定されているのが特徴です。
ヨーロッパでも、EUにより共通のオーガニック認証制度が設けられています。国によって多少の違いはあれ、基本的には化学合成農薬や遺伝子組み換え種子の使用を禁止するなど、日本とほぼ同等の基準が適用されています。
日本企業の海外進出
世界的なオーガニック市場の拡大を受け、日本企業も海外への積極的な進出を始めています。現地のニーズに合わせた商品開発や認証取得を行うことで、海外消費者の獲得を目指しています。
現地認証の取得
日本のオーガニックフード企業は、海外進出に当たり、現地の認証取得に力を入れています。光食品株式会社は、有機JAS認証に加えてEUやアメリカの認証も取得し、商品の差別化を図っています。このように複数の国の認証を取ることで、グローバル市場での信頼性を高めることができます。
現地ニーズへの対応
また、日本企業は現地のニーズに合わせた商品開発にも注力しています。光食品株式会社は「ゆず七味」などを東南アジア向けに販売し、好評を博しています。このように、日本の伝統的な食材を生かしつつ、現地のニーズに合わせた工夫が重要となります。
海外展開により、日本のオーガニック企業の売上げはさらに伸長が見込まれています。輸出額に限っても、光食品株式会社で1.2億円に達するなど、成果が表れ始めています。
まとめ
オーガニック市場は、世界的に急成長を続けている一方、日本では普及が遅れている状況にあります。その背景には、オーガニックに対する日本と海外の意識の違いがあると考えられます。
しかし近年、SDGsの推進などから、日本でも環境に配慮する意識が高まりつつあります。また、日本企業の海外進出が活発化するなど、オーガニック市場の拡大に向けた変化の芽も見られます。今後、オーガニックに対する正しい理解が浸透し、日本のオーガニック市場がさらに成長することが期待されています。
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